1582年6月21日京都きょうとにある本能寺ほんのうじは燃えていた。燃え盛る火が空を夕焼けの様に染め上げ、怒号や悲鳴が辺りにこだまする。まさに本能寺は地獄絵図と化している。 この地獄絵図を描いたのは明智光秀。彼は主君である織田信長が、ほとんど兵を引き連れず本能寺で寝ていた所を襲ったのである。そうつまり明智光秀の起こした謀反であり、後のちに本能寺の変へんと言われる事件の最中であった。 本能寺の屋敷の中では、燃え盛る炎ほのおの中にあっても織田信長は座禅ざぜんを組んでいた。そして立ちあがると、近くに落ちていた少し焼け焦げた扇子せんすを拾う。 「人間五十年、化天げてんのうちを比ぶれば、夢幻ゆめまぼろしの如くなり。一度生を享け、滅せぬもののあるべきか」 信長は敦盛あつもりを舞っていた。その場に立っているだけで、焼け付く様な熱さなのにも関わらず、信長の表情は穏やかで何かを悟っている様にさえ見えた。 彼はもはや自分の運命が尽きた事を受け入れていた。あの光秀が謀反を起こしたのだ、万に一つも失敗する可能性がない事は、信長自身が一番わかっていたからだ。なので信長のはこれ以上は戦うつもりはなかった。 となると後は、明智光秀の兵に殺されるしか道はない。しかし信長は敵の手で討たれる事は最大の屈辱だと思っていた。なのでこの場にて自害するつもりであったが、信長の心を天か察したのか。敦盛あつもりを舞い終えると、終わるのを待っていたかのように天井が崩れ信長は死んだ……。 そしてここに本能寺の変が終結したのだった。 (attack on titan)
作成日
2021/01/02
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